キャンプ場で「テントとタープをどう配置するか」に頭を悩ませたことはないだろうか。
特に、広さが限られた区画サイトや、少し手狭なフィールドでは、普通に並べて設営するだけでスペースを使い切ってしまうことも少なくない。
そんなときに私が好んで実践しているのが、テントとタープを縦一列に立体的に組み合わせる「小川張り」という設営方法だ。
一見すると難しそうに見えるが、仕組みとコツさえ掴めば、一般的なギアでも簡単に設営することができる。
この記事では、この「小川張り」という名前の由来や歴史といった背景から、一般的なタープでも綺麗に仕上げるための具体的な手順や、支えとなるペグ選びの重要性について、私の体験をもとに分かりやすく解説する。
限られたスペースを最大限に活かし、野外での居住空間をグッと快適にするための参考になれば幸いだ。
スノーピークで実践する小川張りの実例|アメニティドームとの組み合わせ
私が実際に愛用している、スノーピークの「アメニティドーム」と「アメニティタープ」を小川張りで組み合わせた実際の設営風景がこちらだ。

この張り方をマスターすると、テントの前方に驚くほど広々とした、快適なリビングスペースを生み出すことができる。

このようにタープの下からテントの出入り口へ、雨に濡れることなくスムーズに移動できる動線が完成する。
手狭な区画サイトでも、この組み合わせならスペースを無駄にすることなく、快適な居住空間を縦方向にしっかりと確保することが可能だ。
「小川張り」の歴史と名前の由来|伝統ブランドが魅せた設営の革新
今ではすっかり一般的な設営スタイルとして定着している「小川張り」だが、その名前には日本のキャンプシーンを支えてきた深い歴史がある。
この張り方の原点となっているのは、1914年創業という非常に長い歴史を持つ、日本の老舗国内アウトドアブランド「ogawa(旧・小川テント)」だ。
限られたサイトスペースであっても、テントとタープを美しく連結し、同時に雨よけとしても機能させるスタイルとして、同社が「システムタープヘキサDX」という製品を提案したのがすべての始まりである。
この画期的な製品が発売された後、実際にフィールドで目にしたキャンパーたちの間で「ogawaのあのスタイルは素晴らしい」と口コミやSNSでまたたく間に広がっていった。
そうして公式の名称を超えて、いつしかキャンパーたちの間でリスペクトを込めて「小川張り」と呼ばれるようになり、現在の定番スタイルとして定着したという背景がある。
そして、この小川張りを実現するために欠かせない重要なアイテムが、タープとテントを直接つなぐための「セッティングテープ(コネクションテープ)」と呼ばれる延長ベルトだ。
もともとはogawaの専用製品に付属していたものだが、現在ではこのテープ単体でもさまざまなメーカーから販売されている。
そのため、他社製タープを使っている場合であっても、このセッティングテープを一本追加するだけで、伝統的な「小川張り」の恩恵をそっくりそのまま手に入れることができるのだ。
小川張りを支える、強固な足回りの重要性|「ソリッドステーク30cm」を選ぶ理由
一見すると、頭上の美しいシルエットやリビングスペースの広さにばかり目が向きがちな小川張りだが、実は最も命を吹き込むべきは「足回り」、つまりペグの選定にある。
小川張りは、テントの後方へポールの位置を逃がし、そこから延長ベルトを使ってタープを引っ張るという構造上、通常の設営方法よりもメインポールやペグに対して非常に強いテンションがかかり続ける。
もしここで、テントに付属しているような細いアルミペグやプラスチックペグを使っていれば、少し突風が吹いただけで簡単に抜けてしまい、全体の倒壊に繋がりかねない。
設営全体の安全性を担保し、美しい張りを一日中維持するために、私が絶対に妥協しないのがペグの強固さだ。
私が長年信頼を寄せ、このアメニティタープの設営でも必ず使用しているのが、スノーピークの鍛造ペグ「ソリッドステーク30cm」である。
どんなに硬い地面や石が混ざった砂利サイトであっても、ハンマーで叩き込めばグイグイと確実に入り込んでいく頼もしさがある。
そして、小川張りの強い負荷に耐えるためには、20cmクラスの短いペグでは心許ない。地中深くでガッチリとホールドしてくれる「30cm」という長さがあってこそ、夜間に風が強まったときでも、テントの中で安心して眠りにつくことができるのだ。
どれほど優れたテントやタープを使っていても、それを地面に繋ぎ止めるペグが弱ければ、快適なキャンプは成り立たない。
特に負荷の大きい小川張りを実践するときこそ、しっかりとした本物のペグを選ぶことが、安全で美しい快適な空間を作るための最大のコツだと言える。
美しさと快適さを両立する|小川張りの設営手順と微調整のコツ
小川張りを美しく、そして快適に仕上げるためには、テントとタープの位置関係と、ポールの高さのバランスが非常に重要になってくる。
セッティングテープ(延長ベルト)の長さは、「メインのテントとタープをどれくらい重ねるか」によって調節するのがポイントだ。
せっかく小川張りをするのであれば、ある程度テントとタープをしっかり重ね合わせ、テントの前室(出入り口)の延長線上にそのままタープのリビング空間が続くようにレイアウトしたい。こうすることで、一体感のある美しいサイトが完成する。
そして、全体のシルエットを綺麗に見せるためのもう一つのコツが、2本のメインポールの高さに変化をつけることだ。
前後で同じ高さのポールを使うよりも、後ろ側(テント側)のポールを少し低く設定したほうが、テントとタープの隙間がタイトになり、空間が低く抑えられて格段に美しくなる。
私が愛用しているスノーピークの「アメニティタープ」は、標準で高さの異なる2本のポール(280cmと240cm)がセットになっているため、この高低差を作るのにも非常に都合が良い。
具体的な設営の手順としては、まず先にタープをセッティングテープとともに立ち上げてしまうのがおすすめだ。
タープのベースがしっかりと完成した後に、後方からテント(アメニティドーム)を滑り込ませるようにして後ろ側に建てる。
空間のバランスを見ながら、ベルトの張り具合やポールの位置で全体の高さを微調整していく。この順番で進めるのが、位置決めを失敗せず、最もスムーズに綺麗に張れる手順である。
さらに手狭なサイトでは、大胆に「深く重ねる」という選択肢
もし、さらに奥行きや広さが限られた手狭なサイトに遭遇したときは、セッティングテープの長さを短く調節し、テントとタープをより大胆に「深く重ね合わせる」のが正解だ。
私が実際に、周囲を草木に囲まれた少しタイトな区画で設営した例がこちらである。

先ほどの設営例と比べると、タープがテントの半分近くまで深く覆いかぶさっているのがお分かりいただけるだろうか。
このように重ねる割合を大きくすることで、サイト全体の縦の長さをさらにコンパクトに凝縮することができる。
深く重ねることのメリットは、省スペース化だけではない。
タープのサイドの傾斜がテントを包み込むような形になるため、横からの風や雨の吹き込みに対して非常に強くなるのだ。同時に、周囲からの視線も適度に遮られ、まるで秘密基地に籠もっているかのような、落ち着いた大人のプライベート空間が生まれる。
サイトの広さやその日の天候に合わせて、ベルト一本で「重ね具合」を自由自在にコントロールできる柔軟性。
これこそが、私が小川張りを愛している本当の理由なのだ。
設営を終えて特等席で過ごす|冷たい一杯と大人の余白
ペグをすべて打ち込み、全体のテンションを微調整して、小川張りの美しい稜線が完成する。設営という適度な身体の運動を終えたあとに訪れるのが、キャンプの中で最も充実した時間だ。
タープが作り出す遮光性の高い大きな影の下に、自分だけの特等席を用意する。
私が愛用しているのは、スノーピークの「ローチェア30」だ。腰を深く落ち着かせ、すっぽりと身体を預けられるこの椅子に腰掛けた瞬間、設営の緊張感から一気に解放される。
チェアに深く腰掛け、まずは温かいお茶を淹れてゆっくりと喉を潤す。
もしそれがじっとりと汗ばむような夏の日のキャンプであれば、クーラーボックスからキンキンに冷えたノンアルコールビールを取り出すのも最高だ。
プシュッという小気味よい開栓の音とともに、冷たい液体を喉に流し込む。タープを吹き抜ける心地よい風を感じながら過ごすこの最初の数十分こそ、何にも代えがたい贅沢なひと時となる。
美しく張られたタープのシルエットを眺めながら、ただのんびりと過ごす。
あらかじめ完璧な動線とリビングスペースを構築したからこそ、これからの時間をいっさいのストレスなく、心ゆくまで快適に愉しむことができる。
忙しい日常から離れ、自分の手で居心地のいい空間を作り上げ、そこで静かに一杯を味わう。そんな大人の贅沢を叶えてくれるのが、私が「小川張り」を愛してやまない本当の理由なのかもしれない。

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