社労士の仕事は、企業の成長を支え、社会に貢献できるやりがいのある仕事です。ただ、お客さんとの関係がうまくいかず、精神的にも金銭的にも疲れてしまうことも少なくありません。
特に独立したばかりの頃は「どんなお客さんでも契約してしまう」ケースが多いんですよね。でも、年収を上げたいなら「顧客を選ぶ」という視点が欠かせません。
この記事では、社労士が年収を上げるために、どんなお客さんと付き合うべきか、逆にどんなお客さんは避けるべきか。実際の体験談を交えながらお伝えしていきます。
報酬と必要作業量のバランス
正直に申しますと、報酬と必要作業量のバランスが合わないケースでは、結果的に利益が出にくくなることがあります。
一度、顧問先ごとに粗利益を計算して、かかった労働時間(時間単価)を計算してみてください。最初の頃は売上ゼロからのスタートなので「経験になるからいいか」と思うかもしれません。最初はそれでもいいのですが、顧客が増えてくると。忙しいのに利益が伸びないという状況になることがあります。
時給に換算すると思っているよりかなり低い金額だったという事もあります。特に入退社が多い会社とか、労使トラブルが多い会社、細かいルールやこだわりが多い会社。たしかに勉強にはなるけど、収益は増えていかない場合もあるのです。
対応に時間がかかりやすいご依頼の傾向
仕事をしていると、どうしても作業が細かくなりがちな案件や、費用面を特に気にされるご相談に出会うことがあります。
もちろん、それ自体が悪いわけではありませんが、そういったケースでは“求められる対応の量”と“設定している報酬”のバランスが合いにくく、気づくと作業時間が膨らんでしまうということが起こりやすいんですね。これはお互いにとって負担になってしまうこともあります。
反対に、事業が安定している企業の方は、こちらにある程度任せてくださる場面が多い気がします。専門家に任せるところは任せ、ご自身は本業に集中する。その結果、やり取りもスムーズで、必要以上に細部へこだわることが少なく、自然と良い関係が続きやすいんです。
なので、もし業務量と報酬のバランスがずっと合わない状態が続くようなら、契約内容を見直したり、担当範囲を整理してみたりするのもひとつの方法です。無理のない関係性を作ることができれば、双方にとってプラスになります。
実際に、以前お受けした就業規則の改訂では、内容よりも書式まわりの調整に多くの時間を取られたことがありました。たとえば、見出しのフォントを変えたいとか、印刷したときの余白をもう少し広くしたいとか・・。
細やかなご要望自体は珍しくありません。ただ、その案件では意見交換のほとんどがレイアウト面に向いてしまい、肝心の内容に十分時間をかけられず、結果として当初の想定よりも大きな工数がかかってしまった、という経験があります。
業務の見直しが、結果的に利益改善につながった話
独立して間もない頃、少し悩みながらも、長くお付き合いしていた取引先との契約を見直したことがありました。細かなやり取りが増えてしまい、本来必要としている範囲をかなり超えた対応が続いていたため、業務のバランスが取れなくなってきたんですね。
更新の時期に合わせて、その旨を丁寧にお伝えし、契約を継続しない判断をしました。決断するまでは正直かなり迷いましたが、当時の状況を考えると、双方にとって最善ではないかと感じたんです。
契約終了後は時間に少し余裕ができ、その分を営業活動や既存のお客さまのサポートに回せるようになりました。売上は一時的に下がりましたが、数か月たつ頃には新しいご縁も増え、結果として以前よりも余裕のある働き方ができるようになりました。
ほかの顧問先でも同様に、業務量と報酬のバランスを見直すことで、全体としての収益構造が整っていく感覚があります。無理のある契約をそのまま続けるより、内容を調整したり、場合によっては見直しを行ったりする方が、事業全体がスッキリして“筋肉質”になっていく、そんな印象です。
法令に沿わない依頼には、専門家としてしっかり対応方針を示す
業務を続けていると、ごくまれにですが、法律や制度の趣旨から外れた対応を求められることがあります。独立したばかりの頃は特に、断りにくい雰囲気になることもあり、どう返すべきか悩む場面もあるんですよね。
たとえば、労務管理で説明しているときに、「もっと都合よくならないか」といったご相談を受けたり、助成金の申請で実態と異なる方向へ話が向きそうになったり。そういったケースでは、一見するとちょっとしたことのように見えても、こちらが引き受けてしまうと、後から大きなトラブルにつながることがあります。
一度でも曖昧な対応をしてしまうと、「今回もお願いできるだろう」と誤解されてしまい、依頼の内容が少しずつエスカレートしていくことがあります。そして何より、法律や制度に関わる仕事をしている以上、信頼を損ねるような行為は避けなければなりません。
以前、助成金の相談の中で、事実関係と異なる書類づくりを暗に期待されているような場面がありました。もちろん、その段階ではっきりお断りし、正しい手順をお伝えしました。
短期的には収入のチャンスに見える場合もありますが、そういった依頼を受け入れると、資格や信用に関わるリスクの方がはるかに大きいと感じています。
きちんと対応方針を示すことで、「この人はルールに基づいて動く人だ」と評価してくださる会社も多く、結果的に良いご縁につながることも少なくありません。もちろん、その過程で離れていく取引先もありますが、長い目で見れば、無理のある関係を続けるより健全な状態に近づいていきます。
専門家として、線を引くべきところは丁寧に伝える。その積み重ねが、結果的に仕事の質を守り、安心して働ける環境につながると感じています。は、最初から相手にしない。これも社労士として年収を上げるために必要な姿勢だと強く思います。
まとめ
結局のところ「仕事の量と報酬のバランスが合っているかどうか」がすごく大事なんだろうな、と感じています。
細かい調整が続いたり、費用の話が中心になったり。そういうときは、だんだん全体のスケジュールが圧迫されていきます。
逆に、こちらを信頼して任せてもらえると、進め方もスムーズで、本来の仕事に集中しやすくなります。これは実務をしていると、わりとはっきり実感する部分かもしれません。
で、もし「ちょっと負担が大きいな」と感じる場面が続くようなら、一度しっかり話し合うとか、契約内容を整理するとか、そういう調整が必要になることもあります。それでも変わらない場合は、思い切る判断が必要になることも、実際あります。
また、たまにですが、どう考えても法律の枠から外れてしまうような相談が寄せられることもあります。そういうときは、やんわりでもいいので線を引いておくことが、あとあと自分を守る意味でも大切です。
そうやって関わり方を整えていくと、不思議と時間に余裕ができて、新しい依頼に対応できたり、既存のお客さんに丁寧に向き合えたりします。私自身、そうした調整を重ねる中で、仕事のしやすさが徐々に改善していったように思います。
長く続けていく仕事だからこそ、無理のない形をつくることが、結果的には自分にも相手にも良い方向へ働くのだと、今では感じています。


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