「顧客ゼロ」からどう営業する?開業社労士が語る現実と突破法

このブログ記事は、社会保険労務士として独立開業を目指す方が抱える「どうやって顧客を獲得すればいいのか」という切実な悩みにお答えします。

実際に顧客ゼロから開業して営業を行った社労士が、顧客獲得の厳しさと、それを乗り越えるための具体的な営業方法や心構えについて、現実的な視点でお話ししたいと思います。

顧客獲得の現実と心構え

開業社労士にとって絶対に避けては通れないのが「顧客のつかみ方」、つまり営業方法です。営業ができなければ、どんなに知識やスキルがあっても、仕事として成り立ちません。それくらい大事なテーマです。

さて、どうやって営業して顧客をつかむのか?実は、成功されている先輩社労士の方々も、ある程度決まった方法を駆使して顧客を獲得しています。その方法はいくつかあり、ひとつに絞るのではなく、いくつかを組み合わせて実践している方が多いです。

今回は、その代表的な営業方法をピックアップしてご紹介します。どれもすぐにでも取り入れられるものばかりなので、ぜひ参考にしてみてください。

具体的に、開業社労士が顧客をつかむための営業方法としてよく挙げられるのは、以下の7つです。

    • 1 飛び込み訪問
    • 2 テレアポ営業
    • 3 DM送付・FAXDM
    • 4 異業種交流会
    • 5 SNS
    • 6 ホームページ
    • 7 紹介

    どれも一度は耳にしたことがある手法だと思います。資格予備校や通信教育の宣伝では、資格を取ればすぐに稼げるかのような夢のある話が多いのも事実です。

    しかし、現実にはいいことばかりではありません。営業は思った以上に地道で厳しい場面が多く、最初はなかなか結果が出ず心が折れそうになる方も少なくありません。

    しかし、どの方法も「絶対ダメ」というわけではないのです。実際に、これらの方法のどれかで成功されている先輩社労士が必ずいます。つまり、全体としては厳しい現実があるものの、それぞれの方法で成果を出している人もいる。これが営業のリアルです。

    これから一つずつ営業方法について詳しくご説明していきます。少々ネガティブな話も出てくると思いますが、現実を知った上で取り組むことで、失敗を減らし、結果に近づくことができるはずです。

    ぜひ「現実を踏まえた営業方法」として参考にしていただければと思います!

    自分に合った営業方法を見つけることが大切。焦らず自分のスタイルを築きましょう。

    代表的な営業方法とその実態

    飛び込み訪問:3日で挫折した理由と得た教訓

    まず最初に取り上げたい営業方法は「飛び込み訪問」です。「営業といえばこれ」と思う方も多いのではないでしょうか。ひと昔前までは、新卒の新入社員研修でもよく取り入れられていましたよね。それだけ代表的で、王道とも言える営業手法です。

    ただ、言うまでもなく簡単ではありません。営業に慣れていない人にとっては、かなり精神的にきつい方法です。なぜなら、断られるのが当たり前で、時には冷たくあしらわれたり、心ない対応をされたりします。

    私自身も開業当初、何もお客さんがいない状態から飛び込み訪問をやりましたが、すぐに心が折れてしまいました。「塩をまかれる」なんて話を冗談のように聞くこともありますが、現実としてそれに近い扱いを受けることもあるんです。わたしも「忙しいのに仕事の邪魔するんじゃねえ!」と怒鳴られたことがありました。

    「これしかない!」と必死に取り組んでいるときに冷たくされると、かなりダメージを受けます。だから、心が弱い人や営業に不慣れな人には正直おすすめできません。

    一方で、営業経験が豊富で、断られても気にせず切り替えられる人にとっては大きな武器になります。特に中小企業への訪問では、タイミングが合えば社長と直接話ができることもあります。社長と会えた時点で大きなチャンスを掴める可能性があるのが、飛び込み訪問の最大の魅力です。

    「絶対にこれで結果を出したい」という強い気持ちと、失敗してもめげない精神力がある方には、挑戦する価値がある営業方法です。

    ただし、都市部などは企業が比較的集中していますが、地方や住宅地などは企業が点在していて距離が離れていますので、移動に時間がかかり、件数が稼げないので、あまりお勧めできません。

    わたしも飛び込み営業は3日であきらめて、他の営業方法に変更しました。

    テレアポ(電話営業):100件に1件の出会いが突破口に

    飛び込み訪問の次は「テレアポ」、つまり電話営業です。テレアポの経験がある方にとっては比較的ハードルが低く感じられるかもしれませんね。ですがこれも、飛び込みと同じで「断られて当たり前」の世界です。

    実は私は顧問先が15社くらいになるまでは、このテレアポ営業で契約した顧客が一番多かったです。飛び込み営業と比べてテレアポ営業のいい点は、飛び込みより件数を稼げる点です。企業のリストさえあれば断られてもすぐ次の会社に電話ができるので、飛び込み営業に比べて圧倒的に効率がいいです。

    私自身の経験ですが、電話をかけて実際に社長と話ができるケースは本当に少ないです。まず電話をかけると、事務員の方などが出ることが多いです。そして「社長お願いします」と伝えると、「ご用件は?」と聞かれるわけです。ここですぐに要件をはっきり伝えられないと、「結構です」と切られてしまうことが多いんですよね。

    私の場合は直球勝負で、「○○市の地域密着で活動している社労士です。本日は業務案内でお電話しました。」といっていました。

    稀に、新人の事務員さんなどが素直に応じて、社長につないでくれることもありますし、社長が電話に出ることもあります。

    社長と直接話ができた場合も、断られることがほとんどですが、話を聞いてもらえる社長には手短に自己紹介をしてアポイントを取ります。そして訪問してお客様が困っていることを聞き出し、解決できる方法やお役に立てることを説明して契約をもらうのです。

    テレアポも電話を切られ続けたり、冷たく対応されたりと心が折れそうになることも少なくないので、強いメンタルが必要です。しかし、だからといってこの方法が「無理ゲー」かというと、決してそうではありません。

    私の場合ですが、100件に1件程度アポイントが取れました。そんなに少ないのかと思われるかもしれませんが、電話をするとほとんどがすぐに電話を切られるので、1件にかかる時間は短いのです。3時間も電話すれば100件以上電話することができます。

    そしてアポイントが取れて訪問すると10社に1社くらいは契約が取れました。毎日電話できたわけではないですが、まじめにテレアポを行っていると1か月に1社のペースで契約が取れました。

    信じられないことですが、タイミングよく「社労士を入れようと思っていたところだ」とか「就業規則を作成したいと思っていた」という事があり、契約につなげることができたケースもあります。

    私もそうですが、実際にテレアポを駆使して顧客を獲得してきた先輩社労士も一定数存在します。要は、厳しい現実の中でもやり続けられるかどうか。それがカギだと言えるでしょう。

    DM(ダイレクトメール)・FAXDM:千通送っても反応ゼロ?コスパと工数の現実

    飛び込み訪問やテレアポがあまりに辛いと感じた方が、次に試すことが多いのがDM(ダイレクトメール)送付です。実は私自身もそうで、飛び込み営業をやめた後にDMにチャレンジしました。

    DMのやり方は単純です。まず、送る先のリストを入手し、自分で原稿を作って封筒に入れ、郵送します。ここでよく言われるのが「センミツの法則」です。ご存知ですか?

    これは士業の世界でも有名な話で、DMを千通送って三通、何かしら反応があれば良い方だというもの。ここでいう反応とは、契約に至ることではなく、電話やメールで問い合わせが来るなど「何らかのレスポンス」があるだけです。つまり千通送って、やっと三件反応があれば上出来というのが現実なんです。

    個人で千通送るのはほぼ不可能です。リストを入手して、原稿を作成し、宛名シールを作り、封筒を用意して印刷し、封入して、DMシールを貼り、切手を貼る…。千通ともなると膨大な作業になります。

    切手を何百枚も貼るなんて、現実的ではありませんよね。なので大量に送る場合は業者に依頼することになりますが、当然お金がかかります。

    私は当時、業者には頼まず個人でやりましたが、200通送るのが限界でした。千通の5分の1にあたる200通だと、計算上は反応ゼロが当たり前。実際、何の反応もないことがほとんどでした。

    一回に数百通単位で送らないと効果が見えにくく、個人で続けるのは金銭的にも体力的にも厳しいのが正直なところです。

    またDMに似た方法でFAXDMもあります。こちらは原稿を郵送ではなくFAXで送るのです。これも代行業者があってそこに依頼します。私の場合、DMもFAXDMもなかなか結果にはつながりませんでした。

    ただ、やり方と現行の内容次第では興味を持ってもらえる可能性もあります。資金的に余裕があるなら、業者を活用して大量に送付することも検討してみると良いかもしれません。

    交流会(異業種交流会・士業交流会):名刺交換で終わらせない“関係づくり”のコツ

    開業すると、異業種交流会や士業交流会の案内を目にする機会が一気に増えます。異業種交流会は、さまざまな業種の経営者が集まる場で、士業交流会は弁護士、公認会計士、司法書士、社労士、行政書士など「士」のつく専門家だけが集まる交流会です。

    どちらも「ここで人脈を作ればお客さんが増えるかも!」と期待して、目を輝かせて参加する方も多いでしょう。

    特に異業種交流会では、社長クラスの人が多く集まります。士業にとって社長は潜在的な大きなお客様ですし、士業交流会であれば税理士さんをはじめとした他士業の方とつながり、仕事を紹介してもらえる可能性もあります。まさにチャンスの宝庫に思えますよね。

    実際、私も開業当初にたくさん参加しました。しかし残念ながら、私の場合は異業種交流会・士業交流会でお客さんになってくれた方は一人もいませんでした。

    その理由は明確で、こういった会に来ているのは、すでにビジネスがうまく回っていて余裕がある社長や士業ではなく、起業・開業したばかりで自分の商品やサービスを売り込みたい人ばかりだからです。つまり、私と同じく「お客さんを探しに来ている人」が集まっている場所なんですね。

    実際に参加していると、名刺を交換しても相手は私の名刺をろくに見ずにすぐにしまい、そこから自分の商品の宣伝を延々と始める人が少なくありません。こちらの話にはほとんど耳を貸さず、自分の営業トークばかり。

    そういう方に「この人から何か買おう」と思うでしょうか?人間は自分を尊重してくれない相手には心を開きませんよね。自分の話ばかりして相手への興味を示さない人が多いのが、異業種交流会・士業交流会の現実だと感じました。

    もちろん、交流会に行くこと自体を否定するわけではありません。ただ「交流会に行けばお客さんができる」という甘い期待は持たず、あくまでも経験や情報交換の場として割り切った方が気持ちが楽だと思います。

    異業種交流会や士業交流会は、1〜2時間程度で終わることが多く、たくさんの人と名刺交換できるのは魅力です。しかし、初回の出会いだけでお客さんになるケースはまずありません。一度会っただけではお互いのことを深く知る前に終わってしまい、そのまま連絡が途絶えてしまうのが現実です。

    では、異業種交流会を活用して見込み客を見つけるにはどうすればいいのか。おすすめなのは、交流会で知り合った人と数人でグループを作ったり、継続的に参加したりして、定期的に顔を合わせることです。

    月に1回程度集まって情報交換をしたり、お互いのビジネスを深く知り合ったりする機会を持つことで、徐々に信頼関係を築けます。

    実際に、こういった形で異業種交流会で知り合ったメンバーと定期的に集まり、その関係から仕事につなげている方もいました。単発の交流会で一度だけ会うよりも、何度も会う中で人となりを知ってもらい、「この人なら安心して仕事を任せられる」と思ってもらえることが大切です。

    つまり、異業種交流会や士業交流会は「単発参加で名刺を配るだけ」で終わらせず、その出会いを次につなげる工夫をすることで、本当のチャンスが生まれます。

    SNS:ビジネス色を出しすぎると嫌われる?慎重な活用術

    次にSNSについてです。SNSを使えばお客さんを獲得できるのではないか、と考える方も多いと思います。実際、SNSは無料で情報を発信でき、うまく使いこなせば多くの人に自分を知ってもらえるツールです。

    ただ、私自身の経験と感覚としては、SNSだけでお客さんを獲得するのはなかなか難しいのではないかと思っています。

    というのも、SNSは多くの人にとって「プライベートの場」だからです。友人や家族、趣味の仲間とつながる場として使っている人が多く、そこにビジネスの話題や営業的な投稿をすると、敬遠されてしまうケースがあります。「SNS上で仕事の宣伝をするのはちょっと…」と感じる人が多いのが現実です。

    もちろん、SNSでうまく情報発信してお客さんを獲得している方もいますし、営業用のアカウントを作成してうまく使い分けをしている方や、SNSを使ったマーケティングに長けている方もいるので、一概に無理とは言えません。

    ただ、SNSで集客するのは簡単ではなく、やみくもに投稿を続けても成果は出にくいというのが、私の正直な印象です。

    SNSを活用するなら、仕事の宣伝ばかりにならないように注意しつつ、見込み客リストを集める感覚で自分の考え方や人柄が伝わる内容を発信していくのが大切だと思います。

    ホームページ:2年間反応ゼロから年2件の契約獲得へ

    ホームページについてお話しします。ひと昔前は社労士でホームページを持っている人自体が珍しかったのですが、今は必須と言っていいでしょう。

    ただ、先輩社労士や経験者に聞くと「ホームページからお客さんなんて来ないよ」「名刺代わりに置いておくだけのもの」と言われることが多いのも事実です。

    でも、ちょっと考えてみてほしいんです。営業で一番大事なことって何でしょうか?それは「分母を増やすこと」です。例えば、たった1〜2人にしか営業できなかったら、その人たちにニーズがなければ何も始まりません。でも、100人に営業できれば、10人くらいは興味を持ってくれるかもしれません。

    営業とは、いわば「数撃ちゃ当たる」世界でもあるわけです。そう考えると、ホームページほど分母を増やせるツールは他にありません。

    インターネットを通じて地球上の誰にでも情報を届けられるわけですから、潜在的なお客さんの数は理論上70億人です。飛び込み訪問では近隣の会社にしか営業できず、DMも送れる数や地域に限界があります。でもホームページは、24時間365日、自分が寝ている間でも世界中の誰かに自分の存在を知ってもらえる可能性を持っています。

    もちろん、ホームページを作っただけで自然とお客さんが舞い込むわけではありません。しかし、検索エンジン対策(SEO)やコンテンツの充実など工夫次第で、自分に興味を持ってくれる人の母数を圧倒的に増やせるのがホームページの魅力です。「名刺代わり」どころか、最強の営業ツールになり得る存在だと思います。

    私の場合、現在では年間2件程度ホームページから契約に結び付くお客さんがいますが、開業して2年程度は全く反応がありませんでした。しかし、ホームページの内容や、労務関係のニュースなどを更新したりしているうちに少しづつ反応が出るようになりました。

    紹介:開業2年はゼロでも、いずれ最強の営業ルートに

    最後に「紹介」についてです。開業社労士にとって、最も有力で現実的なお客さん獲得方法がこの紹介です。実際に成功している社労士に話を聞いても、ほとんどの方が「お客さんは紹介で増えている」と口を揃えます。

    紹介があることで営業の難易度がぐっと下がるのは間違いありません。お客さんの立場からしても、「あの人に紹介してもらった社労士だから断りづらい」という心理が働きやすく、成約につながりやすいのも大きなメリットです。

    ただし、裏を返すと「紹介者の顔を立てなければ」とプレッシャーを感じる方もいるので、紹介を受けた側としては注意と配慮が必要です。また、開業間もない未経験の社労士にお客様を紹介してくれるケースは少ないといっていいでしょう。

    私は、開業して14年たった現在ではこの紹介により契約をいただくことが一番多いですが、軌道に乗るまでの開業してから2年間は、ほとんど紹介は得られませんでした。

    紹介のメリットは信頼がベースにあるため、お客さんとの関係性が築きやすく、結果的に長くお付き合いできるケースが多いです。また、満足していただければそのお客さんからさらに別のお客さんを紹介してもらえる「紹介のサイクル」を作れるのが、最大の魅力です。

    この紹介の連鎖が回り始めると、自分から積極的に営業をかけなくても安定的に新規のご縁が生まれるようになります。まさに最強の営業方法と言えるでしょう。

    まとめ

    ここまで、開業社労士にとって代表的な営業方法をお伝えしてきました。顧客獲得の方法は本当に多岐にわたりますが、どの方法にも必ず「それで成功している人」がいることを忘れないでください。

    飛び込み訪問やテレアポ、DMは断られるのが当たり前なので、心が折れない覚悟が必要です。

    異業種交流会や士業交流会は、単発で参加するだけではまず成果が出ませんが、同じメンバーと継続的に会って関係を深めていくことで、仕事につながるチャンスが生まれます。

    SNSやホームページはすぐに成果が出るものではありませんが、自分を知ってもらえる「分母」を大きく広げられる可能性を持っています。

    そして、やはり最も効果的なのは「紹介」です。紹介のサイクルを作り、紹介から紹介へとつながる形ができれば、営業の苦労をぐっと減らすことができます。

    いずれの方法も一長一短があり、「これさえやれば必ずうまくいく」という正解はありません。最初から結果を求めすぎず、自信を持って、努力と時間をかけて取り組むことが大切です。

    最初は何をやっても成果が出ないのが当たり前ですが、地道に続けることで、少しずつ道が開けていくはずです。それは、今成功している先輩社労士たちも皆、同じように歩んできた道です。

    焦らず、一歩ずつ前に進んでいきましょう!

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